世間のことを浮世(うきよ)といいますが、
本を読んでいてこのことばに出くわすと、
いつも思い出すのが
『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』。
浅丘ルリ子さん演じるリリーさんと寅さんの出会いが描かれる忘れられない回
であります。
リリーさんが、
自分のこと自分の生活のことを、
あってもなくてもどうでもいいような、
あぶくみたいなもんだと少々自嘲気味に言う。
すると寅さん、
共感するようにうなづいて、
「うん、あぶくだよ。それも上等なあぶくじゃねえやな。
風呂の中でこいた屁じゃないけども背中の方へ回ってパチン!」
なんてことを言う。
リリーさん、
思わず笑いがこみあげ…。
前の日の夜汽車での無言のシーンと併せ、
印象深く、
シリーズ中いちばんと言っていいぐらい好きな場面です。
『広辞苑』で「浮世」を調べると、
見出し語として【憂き世・浮世】となっており、
(仏教的な生活感情から出た「憂き世」と漢語「浮生(ふせい)」との混淆した語)
の説明があります。
『男はつらいよ』には、僧侶がでてきたり、
寅さんが僧侶に扮するシーンもあり、
仏教との親和性が高い映画といえるかもしれません。
まさに
「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。」
であります。
背中の方へ回ってパチン!
・水澄むや森の樹液の上り下り 野衾

