さまざまのこと 32

 

小学三年のときの担任は、川上景昭(かわかみ かげあき)先生。
背の高い先生で、教室はいつも明るく、
笑うときは大きく口をあき、
顔を真っ赤にし声を出して笑うのが常でした。
たまに授業から離れ、こわい話をしてくれることがあり、とてもこわかったけど、
おもしろかった。
子どもたちは、そのおはなしが好きで、
教科書をつかった勉強ではないからよけいに、
「先生、こわい話をしてよ」と、
ねだることも間々ありました。
夜な夜な墓場に向かう人がいて、その人のあとをこっそりつけていくと、
墓地にある目的の場所に着く寸前、
その人がいきなりうしろをふり向いてこちらを向く。
ギャ~~~~ッ!!!
みたいな。
ほんと、こわかった。こわすぎて、
みんなワイワイガヤガヤ。
そんな川上先生がだい好きでした。
先生の家は、いま潟上市になっていますが、
昭和町草生土(くそうど)にあり、
わたしの母の実家からそう遠くない場所にありましたから、
一度、
先生のご自宅を訪ねたことがありました。
このときは、弟をともなわず、
ひとりで行ったと記憶しています。
地名のとおり、草深いところだったような。
先生の家を訪ねるなど、はじめてのことでしたから、
緊張して何をしゃべったのか、
おぼえていません。
ただ、そのとき出してくださったメロンの味は忘れられません。
メロンを食べるのが初めてではなかった
と思いますけれど、
とても甘くて、同じメロンと思えませんでした。
『父のふるさと 秋田往来』を上梓した折に、
四十数年ぶりに先生のご自宅を訪問し、拙著を謹呈しました。
ほど経て、会社に手紙がとどきました。
川上先生からの手紙。
拙著を読んでくださった感想が記されていました。

 

・夏草や雨に打たるる古き址  野衾