さまざまのこと 30
わたしの父は、おんな五人、おとこ三人の八人きょうだいの長男。
八人のうち、
後に生まれた歳の若いほうはおんなで、
M子、Y子、T子。
三人とも嫁いで、いまはそれぞれ孫がいますが、
結婚する前は、わたしの実家にいっしょに暮らしていました。
三人とも仲がよかった。
結婚する前の三人を思い浮かべるとき、
忘れられない二つのことがあります。
ひとつは、ちょっと信じがたいことながら、
Y子とT子の前で、わたしが踊った(!)こと。二階の部屋でした。
ラジオからながれる音に合わせ、即興的な、
めちゃくちゃな踊り。
踊りというか、からだをくにゃくにゃさせたり、ぴょんぴょん跳ねたり、
畳の上を這いずりまわったり、でたらめ。
Y子もT子も腹を抱えて笑うので、調子にのって、
めちゃくちゃ度でたらめ度は
さらに増幅。
へとへとに疲れたのをおぼえています。
のちに、
竹内演劇研究所をへて劇団に入ったとき、踊りのレッスンで、
黒いタイツをはいてやるレッスンがありました。
いやでいやでたまりませんでしたが、
そのことから考えると、
子どものときのアレはいったいなんだったのかと思います。
三人の叔母にまつわるもう一つの思い出は、
なにの話題でそうなったのかは分かりませんけれど、
年上のM子vs.Y子+T子になったことがありました。
そのとき、
冗談半分だったと思いますが、
M子が立ち上がり、
両腕を肘で曲げ、ボクシングのファイティングポーズのような格好をし、
片脚をあげて、
「けんとこ、するが!?」と言いました。
けんとことは、拳闘コ。
秋田では、いろいろなものにコを付ける。
お椀はわんコ、茶碗はちゃわんコ、お茶はおぢゃッコ、飴は飴コ。
なので、拳闘コ。
歳をとってすっかり安定しているように見えても、
子どものときや若いときというのは、
いろいろさまざまな出来事があり、あとから思えばなんで?
ということが少なくないようです。
『赤毛のアン』シリーズを読み、
その感がいっそう深くなりました。
・予定無しただ冒険の夏に入る 野衾