さまざまのこと 27
子どものころの釣りといえば、
ふるさとの町の由来となった川でのチラランジ(=アブラハヤ)釣りでしたが、
もうすこし大きくなったころ、
短い期間でしたが、
フナ釣りにはまったことがありました。
いま八郎潟町ですが、
かつて一日市町(ひといちまち)という町がありまして、
1956年に、面潟村(おもがたむら)と合併して八郎潟町になったので、
わたしがものごころついた頃には、
一日市町はなかったのですが、
中世から受けつがれているらしい伝統的な「一日市盆踊り」に
その名をとどめているように、
子どもながら、
「そこ」は「ひといち」という土地なんだという認識がありました。
その一日市に、
釣り具をあつかう店がありまして、
ちなみに、
わたしの村(いまは町)には、そういう店はありませんでした。
釣り具だけでなくエサも売っており、
フナを釣るにはミミズでなく、ゴカイがエサでした。
そのことをだれに聞いたのか、
忘れました。
それはともかく、はじめてゴカイを目にしたときの衝撃は忘れられません。
岡本太郎さんではありませんが、なんだこれは!
いやいや、気持ち悪いのなんの。
びっくり。
ミミズに無数の柔らかい毛というか足が生えているような形状。
でもすぐに慣れて、店でゴカイを求め、
自転車で、
八郎潟へそそぐ近くの井川で針を落とした。
ゴカイの気持ち悪さは、
チラランジでないフナを釣りあげたい期待の大きさに、
すぐにしぼんでしまった。
ウキがクッ。と、
ググッ、ググッ、ググググッ。
引きの強さのすさまじいことすさまじいこと。
チラランジの比ではありません。
魚影が見えてきて、やがてバシャバシャバシャ!
あせったー!
すげー、すげー、
フナを釣った釣った。
一匹でなく、数匹釣りあげ、家に帰るときのあのときの気持ちといったら。
・漕ぎゆけば潟の上なる雲の峰 野衾