さまざまのこと 8

 

小学四年の年は、いま振り返れば、いろいろな意味で転機の年だったのかなぁ
という気がします。
本を読まないわたしに母が夏目漱石さんの『こころ』を買ってきた
のが小学四年のとき。
理科教室の黒板のうえに掲げられた「真理探究」の揮毫を見、
意味も分からないのに鼻息荒く、
そうだ人生これでいこう、と、りきんだのも小学四年。
理科教室といえば、
はじめてじぶんで料理して食べたのも小学四年。
家庭科の実習という名目で、班ごとに何か料理を作って食べるというものでした。
わたしの班では、ほうれん草を油で炒めて塩をふったソテー。
かんたんだけどおいしかった。
だいたいわたしは、子どものころ、
台所に立ったことがほとんどありません。
料理をつくるとか、母や祖母が料理するのを手伝うとか、
したことがありません。
せいぜい、つくられたものを飯台に運ぶぐらい。
なので、
理科教室でつくって食べたほうれん草のソテーが忘れられない。
それは、はっきりとおぼえているのですが、
あのとき、みそ汁もつくったような気もするし、
そうじゃない気もします。
ご飯は、家から持ってきたのだったかな、
その辺が、どうもぼんやりしていてつかめない。
まさか、炒めたほうれん草だけ食べたわけじゃないと思うけど。

 

・車窓より眺めせし間の桜かな  野衾