さまざまのこと 6
子どものころ、昆虫にハマりました。本を読まない子どもだったのに、
子ども向けの『ファーブル昆虫記』
だけは学校の図書室から借り出したことがあります。
家に持って帰って読みましたが、さいごまで読んだ記憶がありません。
夏休みになると、昆虫採集に出かけました。
弟といっしょに、あっちこっちさがし歩きました。
真夏の暑いなか、
さんさんと照る日差しを浴びながら、
川べりに立つ木々のもとへ歩み入り、そっと幹の肌を見つめます。
あ。いる!
クワガタムシはけっこう採った気がします。
ミヤマクワガタが多かったような。
バッファローの角みたいなのがあるノコギリクワガタは少なかった、かな。
カブトムシは、小さいのやメスは手に入っても、
大きなオスのカブトムシは珍しかった。
そういうことを学校で話したら、
Mくんが、
じぶんのところには、大きなカブトムシがいっぱいいるよ、と自慢げに話しだした。
えー、そうなの、いいなぁ。
というわけで、
学校の帰りに、わが家とは反対の方角、Mくんの家を訪ねたら、
大きなカブトムシがいるわいるわ、
カブトムシの大軍団。
Mくん、気前よくぼくに一匹分けてくれました。
二匹だったかもしれない。
成虫を採集するだけでなく、幼虫から飼いはじめ成虫まで育てるなど、
昆虫熱はしばらくつづきました。
完訳版の『ファーブル昆虫記』を読んだのは、
春風社をはじめてからのこと。
なつかしさもありましたけど、それよりも、
ファーブルさんの人生が味わいぶかく描かれており、
ダーウィンさんとの交流をふくめ、
こういう本であったのか、
と、新鮮な驚きがありました。
・花曇りうす紫の故郷かな 野衾