『エドワード・トマス訳詩集』1
『エリナー・ファージョン伝 夜は明けそめた』のなかに、
エドワード・トマスさんとの親交が
いろいろ記されていたので、
弊社から2015年に刊行された吉川朗子(よしかわ さえこ)さん訳の
『エドワード・トマス訳詩集』を読み返しました。
トマスさんの詩を読むことで、
ファージョンさんがつむぎだした物語に新たな光が差してくる
ようにも思えます。
下の引用は「種蒔き」と題された詩。
種蒔きには
最高の日だった。地面は
煙草屑みたいに
心地よく乾いている。
遠くでふくろうが
そっと鳴きはじめてから
一番星が出るまでのひと時を
僕は深く味わった。
長く引き延ばされたひと時、
作業の済んでないところは
残っていない。早蒔きの種は
すべて無事に蒔かれた。
今こそ 雨の音を聞こう。
風のない軽やかな雨、
半ば口づけ、半ば涙のように
お休みを告げる 雨の音を。
(エドワード・トマス[著]吉川朗子[訳]『エドワード・トマス訳詩集』
春風社、2015年、pp,82-83)
詩を読む喜びというのがあります。詩はだいたい短いけれど、
たとえばこういう詩を読むと、
ほかの本では得られない、しずかな感動がわいてきます。
・俯きてまた来て見上ぐ桜かな 野衾