セネカさんに笑う

 

茂手木元蔵さんの翻訳により、セネカさんの文章を少しずつ読みながら、
「怒りについて」書かれた珠玉のことばに触れる度、
じぶんの日常と来し方を
ふかく反省させられることになるわけですが、
まさか、セネカさんの文章を読んで、
笑ってしまうことになるとは思ってもみませんでした。

 

誰かが君に侮辱を加えたりする。
しかし、
ストア哲学者のディオゲネスに加えられた侮辱ほど大きなものがあろうか。
ちょうど彼が怒りについて論述していた時のことである。
一人の青年が大胆にも彼に唾つばを吐きつけた。
しかしディオゲネスはじっと、
賢者にふさわしくこれに堪えた。
そしてこう言った。
「無論私は怒ってはいない。
だが、怒るべきかどうかには迷っている。」
(セネカ[著]茂手木元蔵[訳]『道徳論集(全)』東海大学出版会、1989年、p.229)

 

「だが、怒るべきかどうかには迷っている。」
ここで、ついプッと笑ってしまいました。
だって、ふつう、怒るときというのは、迷う前に爆発している
(わたしの場合ですけど)よ。
のんびり迷っている暇などないですって。うん。
でも、
とは言い条、
なんか、いいなぁ、こういう人。
ほんとかなぁ。
こういうひとにこそなりたいと思うけど、
無理な気がする。
気がします。

 

・うららかや道草の間に忘れたり  野衾