本を閉じる

 

人生を坂道にたとえたり、マラソンにたとえたりします。
そうすることで、人生の意味が、より明確になる気がするからでしょうか。
始まり、終り、途中にもドラマがあります。
本はどうだろう?
と、
ふと思いました。
小さな本はもとより、どんなにぶ厚い本でも、
あたりまえですが、
本を閉じるとき音はしません。
何巻もあるような長大な本を、二か月、三か月、あるいはそれ以上の時間をかけて読む
ことがあり、
途中眠くなったり、飽きたり、感動したりもして、
人生にたとえていいような気もしますが、
そうはしない。
いよいよ最終巻の最後のページを読み終え本を閉じるとき、
たとえば、
ファンファーレが鳴ってくす玉が割れる
ようなことはなくて、
スッと終る。
わたしはこれが好きです。
「おわったー!!」とバンザイをするようなことはない。
(やりたくなる本がたまにある)
何か月もかけて読んできた本でも、
本を閉じたら、
何事もなかったかのようにつぎの行動に移りますから、
じぶん以外はだれも気づかない。
ただ、
ちょっとこころに空白ができる気がして、
その味わいも悪くないと思います。

 

・初夢やくりくりの眼の祖母がゐる  野衾