疲れが吹っ飛んだ

 

休日出勤しての仕事のほとんどは、組んだ原稿を読みすすめることでありまして、
だったら家に持ち帰ってやれば良いではないか
と自分でも思うのですが、
実際、そうすることもありますけれど、
休日の仕事場の広々とした静寂がいまのわたしには好ましく、
いとわず出かけて行きます。
パソコンを立ち上げ、お香を焚き、
それからおもむろに、組んだ原稿の束を机の上に置き。
メガネを外して原稿を読みはじめます。
二時間ほどつづけるとちょっと疲れてきますから、
気分転換に、YouTubeで好きな歌を。
このごろのお気に入りは、
数年前テレビの番組で見たインドネシアのファティマさんがその番組で歌った
いきものがかりさんの「ブルーバード」。
その場に居合わせた人たちの驚きの表情もおもしろく、
見ていて飽きません。
ふと、
ハイフェッツさんの「ツィゴイネルワイゼン」を聴いてみようかな、
と思い入力すると、
画面横にHIMARIさんという少女の名まえが出てきました。
日本人の女の子のようです。
何気なくクリックし見てみることに。
……………
不覚にも、
右の頬をあたたかいものが濡らします。
くり返し見ているうちに、
少女の顔が興福寺の阿修羅像に重なっていきます。
疲れが吹っ飛び、
また原稿に向かいます。

 

・駅一つことば置き去り冬の旅  野衾