こころのあり様

 

私たちが一人ぼっちの寂しさから行動する時、
私たちの行動はいとも簡単に暴力的なものになってしまいます。
多くの暴力が、愛を求めてのことであるというのは、
悲劇です。
一人ぼっちの寂しさから愛を探し求める時、口づけは容易に噛みつくことになり、
抱擁は殴打となり、心にかけて見ることが疑いの目で見ることになり、
聴くことが立ち聞きに、
身を任せることが強姦になってしまいます。
人間の心は愛を切に求めています、
条件や限界、制約のない愛を。
しかしどのような人もそのような愛を与えることは出来ません。
私たちがそのような愛を求める度に、
私たちは暴力の道へと向かってしまうでしょう。
(ヘンリ・J・M・ナウエン[著]嶋本操[監修]河田正雄[訳]
『改訂版 今日のパン、明日の糧』聖公会出版、2015年、p.52)

 

むかし、『林檎殺人事件』という変ったタイトルの歌が流行りました。
樹木希林と郷ひろみが、
海賊船の船乗りみたいな衣装を身にまとい、
くるくる踊りながら歌っているのをテレビで見ました。
歌の内容はといえば、
殺人現場にリンゴが落ちていて、
そのリンゴには、がぶりと齧った歯形が付いていた。
捜査員は頭をひねったけれど、
そこにパイプをくわえた探偵が現れ、男の女の愛のもつれだよ、なんてことを言う。
アダムとイブがリンゴを食べてから、跡を絶たない、なんてことを言う。
作詞は阿久悠。
歌のはじまりとおわりは、
「アア、哀しいね、哀しいね」で、
まさに悲劇。
コミカルな歌を、当時のわたしは、変な歌と思って聴いていましたが、
人間のこころのあり様を鋭く突いていた歌であったなぁ
と思います。

 

・太平山雉鳴く空の青さかな  野衾