一日のことば

 

傷ついた鹿は一番高く躍り上がると
狩人のいうのを聞いたことがある
それはただ死の法悦にすぎなく
やがて叢くさむらは静かになる

 

砕かれた岩はいずみをほとばしる
踏まれた鋼はがねは跳ねかえす
頬は病に冒されると
かえって紅くなる

 

陽気は苦悩のよろい
なかでそれは注意ぶかく守っている
だれかが血を見付けて
“傷ついている”と叫ばないように

 

わたしが一日一章ずつ読む本に、
大塚野百合・加藤常昭編『愛と自由のことば 一日一章』があります。
日本基督教団出版局から
1972年12月15日に発行されたもので、
ネットで検索すると、
装丁が新しくなったものが今もでています。
需要があるのでしょう。
もう五年ぐらい
毎日読んでいますが、
同じことばが、
年によりちがった印象を受け、おもしろく感じます。
引用したのは、
エミリー・ディキンソンの「傷ついた鹿」という詩で、
新倉俊一訳『世界詩人全集12 ディキンソン・フロスト・サンドバーグ詩集』
(新潮社、1968)から採られています。
7月19日のページ。

 

・森閑と人も集まる夜店の灯  野衾