ええっ!! そうだったの!!

 

もう四十年以上前になりますが、
大学生の頃いちばん聴いていたのが、
スティービー・ワンダー。
わたしにとっての“青春の音楽”といっても過言ではないでしょう。
なかでも大好きだったのが、
アルバム『キー・オブ・ライフ』に収録されていた『Another Star』
まだレコードの時代、
何十回どころか、
おそらく、
何百回となく聴いたはずです。
あのシャウトを聴いて孤軍奮闘横断歩道「よし! きょうも頑張るぞ!」
と気合いを入れ、
大学へ行こうとした朝のことなど、
今は懐かしい思い出。
その『Another Star』について、
桑田佳祐が驚くべき発言をしており、目をみはりました。

 

『勝手にシンドバッド』の「ラララ」のイントロだって、
あの頃流行ってたスティービー・ワンダーの『Another Star』を
……まぁ、ノリで拝借したわけである、
エッヘン(威張るな!!)。
初期のアマチュアイズムというのは、とても無邪気で偉大なものだった。
(桑田佳祐『ポップス歌手の耐えられない軽さ』文藝春秋、2021年、p.83)

 

言われてみれば、なるほどなぁ、
で。
そして、なんだか、いつしか、どういうわけか、
しずかに、感動ともよべるような感情がふつふつと湧いてきたわけで。
『Another Star』も『勝手にシンドバッド』も、
歌は「ラララ」で始まります。
しかし、受ける印象は、まったく違う。
『ポップス歌手の~』は、
先月発売されたばっかりの本ですが、
桑田がこれまでどれほど多くの音楽を聴いてきたか、
また、
それをゆっくり、じっくり消化し、
自家薬籠中のものとして歌を作ってきたか、
そのことがよ~っく分かります。
大瀧詠一、細野晴臣などと共通するDNAを持っているのでしょう。
また例えば、
サザンが所属しているレコード会社、ビクターのディレクターが、
神泉町のスタジオのバー・カウンターで、
そこにいた内田裕也に桑田を突然紹介したとき、
緊張しまくりの桑田に対し、
内田裕也が、
「ふーん」と言いながら、座っていたスツールを回し、振り向き、
例の巻き舌で、
「キミが『いとしのエリー』を作ったのか?」
と、一言。
などなど、文がきらきら光ってる。
こころが籠ってる。
A5判上製、
400ページを超える大部の本、
これからどんなエピソードが出てくるか、
目が離せません。

 

・ここにまた妻の足音木の葉髪  野衾