本の外の本

 

むかし松坂慶子さんが歌った歌に「愛の水中花」がありました。
作詞は五木寛之さん。

♪これも愛あれも愛たぶん愛きっと愛…

そんなふうに始まる歌でした。
1979年リリースとのことですから、
四十二年前。
もうそんなになりますか。
長田弘さんの詩「世界は一冊の本」の冒頭を思い出しているうちに、
連想のシナプスが、あらぬ方向へ連結され、
そういえば、
これも愛、あれも愛、
って歌があったな、
と。
枕が長くなりましたが、
朝、
お気に入りの一人掛けソファに体を預け、
読みかけの本の頁を追いかけていると、
視界の上部を横切るものがあり、
ふと目を上げる。
と、
二羽の小鳥が飛んでいきました。
メガネを外して本を読んでいるため、なんの鳥かまでは見分けがつきません。
ソクーロフの映画にこれと似たシーンがあったような。
シナプスはまた別の方面へと連結され。
うん。
メガネを外した状態で見る薄ぼんやりした世界も悪くない。
しばらくそうして眺めています。
外を見ているのか、
内を見ているのか、
境界が次第に曖昧になってきます。

 

・裏木戸や保土ヶ谷に盈つ草いきれ  野衾