記憶のとびら
興味があって、興味があるから、いろんな本を読むわけですが、
それが小説であれ、哲学の本であれ、
読んでいるうちに、
ふだん思い出すことのない記憶が不意によみがえることが間々あります。
そんなときは、
本のページを両手で押さえたまま、
眼をいったん本から離し、
よみがえった記憶にしばらく浸ります。
と。
本が好きか? と訊かれれば、
嫌いではないけれど、
「好きです」とシンプルに答えるのに、
ちょっと抵抗がある
というか、
もともと本好きな子どもではなかったし。
でも、
本を読んでいると、
読んでいることがきっかけとなって、
本を読まなかった頃の記憶までよみがえり、
そのことは、
ひょっとしたら、
そのことだけがわたしにとって意味があり、
だけでなく、
いまこの瞬間が立体的に立ち現れ、
それがめっぽう面白く、楽しく、うれしい。
その感覚を求めて読むのかな。
記憶のとびら。
どんどん開けていくうちに、
生まれる前の記憶にたどり着けるか…。
それはないか。
・あてどなく色を求めて探梅行 野衾