まず、そういうごど

 

新型コロナの感染者の数が高止まりしていることもあり、
心配をかけないために、
だいたい一日おきに秋田に電話をします。
コロナの前から、
年齢のこともあってか、
とくに父のことばの端端に電話を待っている
様子がうかがえたので、
特段の用向きがなくても、
なるべく電話をかけるようにしている。
用向きがないので、
「天気、なとだあ?」「朝ごはん食べだがあ?」「変ったごどないがあ?」
その三つが決まり文句。
わたしからされる質問が毎度のことなので、
父もそれなりに答えを用意しているのか、
短く的確。
たとえば「去年、屋根のペンキを塗ってもらったせいで、
屋根に積もった雪が全部落ち、雪下ろしの必要がない。
落ちた雪を除雪車で飛ばすだけでよい」
答えが的確だと、
会話はあっという間に終る。
それで最後に父は、
「まず、そういうごど」と、必ず言う。
これがなんだか面白い。
どういうふうなニュアンスかといえば、
おそらく、
「細かく話せばいろいろいろいろ、あるにはあるが、
概略をかいつまんで、要点だけを取り出せば、いま言ったことになる」
といった感じでしょうか。
ただいま5時40分。
きょうは秋田に電話する日。
7時20分になったら電話をします。
最後は、
「まず、そういうごど」

 

・休日の仕事場窓に寒雀  野衾