ビブーティ

 

かつてインドにサイババという偉い(?)指導者がいました。
霊的指導者として、
世界的に注目を集め、
学校をつくったり、病院をつくったり。
日本でもブームになり、
たぶんその頃だったでしょう、
わたしもテレビで動く姿を見たことがあります。
アフロヘアで頭がデカく、
ひとを外見で判断してはいけませんが、
一目見た瞬間、
え!
この人そんなに偉い人なの?
って思いました。
群衆の前に立ち、
手のひらを下にしてニ三度振ってから返すと、
あ~らら、
なんと手のひらに白い粉が出現。
聖なる灰ビブーティ
なるもので、
おもしろがって見ていた気がします。
わたしはただ面白半分に見ていただけで、
それ以上のことはありませんでしたが、
ビブーティの正体は、運動会で白線を引く時に使う消石灰とのことでした。
なので、
何もないところから物質を出現させるのは、
やはり無理で、
ビブーティはいかさまだった
ということになります。
が、
このごろ休日出勤してひとり静かにゲラを読んでいると、
本づくりはあのビブーティに似ている、
と、
ふと感じます。
学問も含め、
アイディア、構想、思想は、
さいしょ頭の中にあって形を成していません。
それが、
一定の時間を経て、
書物の形を成して出現する。
燃やせば灰か。
聖なる灰…
なんだか、ゆっくり現れたビブーティ!
そんな気がしてきました。

 

・騒がしき一日収む寒夜かな  野衾