易と聖書

 

孔子は嘗て易を読んで、この損と益との卦に至つて、
喟(き)然として嘆息された。
其時に御弟子の子夏が、お側に居つてそれを見て、
夫子は何故に嘆息なさいますか、と問うた。
すると、孔子は、
夫れ自ら損する者は益し、自ら益する者は欠く、是(ここ)を以て歎ずるなり、
と仰せられた。
(公田連太郎[述]『易經講話 三』明徳出版社、1958年、p.303)

 

おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、
持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
(新約聖書「マタイによる福音書」第25章29節)

 

益と損、持つと持たない、
さわがしい口説にはない静かで謙虚な極意が語られている。

 

・なに喰ふて今は冬だぞ放屁虫  野衾