良寛さんとおカネ

 

人曰、金ヲ拾フハ至テ楽シト。師自ラ金ヲ捨(すて)、自ラ試ミニ拾フ。
更ニ情意ノ楽シキナシ。
初メ人吾(われ)ヲ欺クカト疑フ。
捨ツルコト再三。遂ニ其(その)在ル所ヲ失フ。
師百計シテ是(これ)ヲ拾ヒ得タリ。
是ノ時ニ至リテ初テ楽シ。
而テ曰、人吾(われ)ヲ不欺(あざむかず)ト。
(東郷豊治編著『良寛全集』下巻所収「良寛禅師奇話」、
東京創元社、1959年、p.529)

 

おカネを拾うのはなんとも楽しいと人が言うから、
そんなものかいな?ということで、
良寛先生、自らおカネを捨て、
そんで拾ってみた。
別に楽しくもなんともないじゃないか。
あれは嘘だったのかと疑いつつ、
たびたび捨ててみた。
すると、
ついに捨てた場所を忘れてしまい、
それからあちこち探してみて拾ったら、
初めて楽しかった、嬉しかった。
わ~いわい。
おカネを拾うのは楽しいというのは、嘘ではなかったわい。

 

…てな感じでしょうか。
ほかのところにも、
人はおカネがなくて困るというが、
じぶんは、
おカネがあると使い道に困るという記述があるから、
こういう人を恬淡とよぶのでしょう。
良寛さんを読むと、
スッキリと、晴れやかな気分になります。
鼻くその話(!)は笑った。

 

・笹鳴きに引かれ訪ねし翁かな  野衾