良寛さんには敵わない

 

国上ノ葊(あん)ニ住(じゅうせ)シトキ、炉ノスミニ小壺ヲオキテ、
俗ニ云フ醤油ノミヲ貯ヘオキ、食残ノモノアレバ此壺中に投ズ。
夏日モ是ヲ食ス。人至レバ人ニモ進ム。
人ハ其(それを)食フニ不堪。
師ハ自若トシテ臭穢ヲ不知(しらざる)モノヽ如シ。
師自ラ曰、
虫生ズレドモ是ヲ椀中ニ盛レバ虫ハ自ラ去ル、
敢テ食フニ害ナシト。
(東郷豊治編著『良寛全集』下巻所収「良寛禅師奇話」、
東京創元社、1959年、p.525)

 

「良寛禅師奇話」は、
解良栄重(けらよししげ)の著。
実際に良寛さんに接したひとの記述であり、貴重な文献であるとのこと。
それにしても良寛さん恐るべし!
ただ者でない!
もうこうなると、奇人変人の域でしょう。
なのに、おとなも子どもも良寛さんに惹かれていく。
そこがなんとも愉快。
「さん」付けしたくなる。
言説でなく、
清廉な人柄から発する、
いわばオーラのようなものが
良寛さんに接する人を惹きつけたようだ。

 

・離れ来て祖母のにほひの日向ぼこ  野衾