老年

 

今月が誕生月で、もうすぐ六十三歳。
六十になったとき、
へ~このおれが還暦かよ、まいったな、
みたいな、
じぶんの年齢を、他人事のようにからかう具合でしたが、
あれから三年がたち、
老年に入ったことをつくづく、また、しみじみ考えさせられます。
右手の高速道路に目をやりつつ、
百八十一段ある階段をゆっくり下りながら、
こころの中に、たしかに、
子ども、少年、青年、壮年のじぶんが息づいている
と感じます。
樹の年輪のように。
若いときに読む本は、
体験を読み込むための補助線でありましたが、
いまは、
本のほうが補助線となって、
ひとつひとつの体験が本によって読みこまれ、
体験が経験へと変えられていくようにも感じます。
あとは、
経験の意味を探り、
ただしく定め、日用の糧とし、
誤嚥せぬよう気を付け感謝して進みたい。

 

・冬の蠅近づく吾を飛び去りぬ  野衾