魂と物質

 

ある種の錬金術的観念がキリスト教の教義に著しく類似しているのは偶然ではなく、
伝統的関連によってもたらされた結果である。
王による象徴表現のかなりの部分は、
キリスト教の教義の源泉から生じた。
キリスト教の教義が部分的にエジプト・ヘレニズムの民間信仰
(およびアレクサンドリアのピロンのそれのようなユダヤ・ヘレニズムの哲学)
から生まれたように、
錬金術もそこに淵源をもっている。
錬金術は純キリスト教起源というわけではなく、
部分的には異教的・グノーシス主義的なものに端を発する。
(C.G.ユング[著]/池田紘一[訳]『結合の神秘 Ⅱ』人文書院、2000年、p.12)

 

卑金属を貴金属の金に変えようとする錬金術そのものは
失敗に終わりましたが、
錬金術のながい伝統と歴史の中で培われた
方法、思考は、
多方面に影響を与え、
たとえば現代化学の目覚ましい進歩は、
錬金術を抜きにしては考えられないようです。
また、
ゲーテやニュートンも、
錬金術にのめり込んでいたとのこと。
目に見えない魂の神秘を、
目に見える物質を通じて顕現させようとする人間の欲望、
業のようなものを感じます。

 

・奥入瀬や旅路の果ての霧深し  野衾