ゲーテさん、納得!

 

「へえ、」とゲーテは笑いながらいった、
「恋愛と知性がなにか関係でもあるというのかね? われわれが若い女性を愛するのは、
知性のためではなく、別のもののためさ。
美しさや、若々しさや、いじわるさや、人なつっこさや、個性、欠点、気まぐれ、
その他一切の言いようのないものをわれわれは愛しはするが、
彼女の知性を愛するわけではないよ。
彼女の知能が光っていれば、われわれはそれを尊敬しよう。
またそれによって娘はわれわれにとって無限に尊く見えるかもしれない。
またすでに恋に陥っているなら、知性は二人を引きつけておくのに役立つかもしれない。
けれども、知性は、
われわれを夢中にし、情熱を目覚ます力のあるものではないのだよ。」
(エッカーマン[著]/山下肇[訳]『ゲーテとの対話(下)』岩波文庫、1969年、p.39)

 

さすが、齢70を過ぎ、18歳の少女に恋したゲーテの面目躍如。
美しさや若々しさを愛するというのであれば、
ふつうの話でしょうけれど、
いじわるさや欠点や気まぐれを愛するというのは、
経験が言わしめる言葉なのでしょう。
ちなみに上の引用文の7行目「尊敬しよう」には、訳文に傍点が付されています。

 

・陰を連れ只管に行く秋の雲  野衾