声と人

 

だからまぁ、一番大事なのはその声の後ろにいるはずの「人」の問題なんだよね。
私はそっちの「内面」の方が問題なんだと思うのよ。
人にとって一番面白いのは「人」なんだな。
確かに音楽って、身体的なものではあるわけです。
肉体ありきのものではあるんだ。
でも大切なのは情緒や感情などの「内面」。
それは反復作業で鍛えられるようなものではないと思う。
(友川カズキ『友川カズキ独白録』白水社、2015年、p.122)

 

引用した上の文章の前に、
デビューしたころ、
レコード会社に言われて一度だけ専門家のもとでボイストレーニングをした
ことがあると記されており、
「生きてるって言ってみろ」のあの友川カズキが
神妙にボイストレーニングをしている姿を想像したら、
笑いが噴き出した。
友川さん、それでどうしたかというと、
「アホらしくなってね、途中で飛び出し」たんだそうです。
で、
ボイストレーニングの有名な先生に向かい、
「どう考えてもこんな練習は必要ないと思います」
と啖呵を切ったところ、
先生は話の分かる人だったらしく、
「うん、君の言うことも間違ってはないな」
ということになり、
すぐに友川さんを解放してくれたのだとか。
下の写真を見ながら
このエピソードの場面を想像すると、
友川さんには悪いけど、
なんともいえず可笑しくなります。

 

・社いま古代のまつり蟬しぐれ  野衾