カストリ新聞

 

和田誠さんの『五・七・五交遊録』を読んでいたら、
カストリ雑誌のことがちょこっとでてきて、
なつかしくなりました。
カストリ雑誌とは、
第二次世界大戦後の数年間に刊行された、
セックス記事や読物を中心とするエンタメ系印刷物で、
雑誌の形のものもあれば、
新聞の形のものもありました。
「カストリ」とは、
酒粕からつくられる「粕取り焼酎」を指し、
三合飲めばつぶれるぐらいの粗悪品のこと。
三「合」に三「号」をかけ、
三号で廃刊するような安直・劣悪な雑誌を
カストリ雑誌と呼びましたが、
戦後のどさくさ感がよく現れています。
なつかしくなったのは、
前に勤めていた出版社で、
膨大なカストリ雑誌のコレクション(コレクターの方から借り受けた)
から、
これはと思われるエログロなものを選び出し、
『カストリ新聞――昭和二十年代の世相と社会』のタイトルで
出版したことがあったからです。
その編集を任されたのでした。
夏の暑い時期に、
古い病院を借り受けた社屋(幽霊を見たという人もいたっけ)
で、
狭い一室に閉じこもり、
戦後まもなく
雨後の筍のように出されたエログロ雑誌から、
わたしのまったくの個人的な趣味嗜好
だけを頼りにセレクトしました。
表紙の絵は新しく友人の画家に依頼しました。
いまも『カストリ新聞』で検索すると、でてきます。
あれ、けっこう売れました。

 

・春の日の機の一息のひと踊り  野衾