銭湯の思い出

 

二十代のころ、
相鉄線の西谷駅近くのアパートに住んでいたことがありました。
白壁を軽くたたくとポロポロ剥がれてくる安いアパートで、
風呂が付いていませんでしたから、
銭湯に通いました。
かぐや姫の『神田川』の世界を地でいくような。
秋田から母と祖母が出てきたのは、
そのころ。
横浜駅の構内で、
祖母は背中に米の袋を背負っていました。
それから三人で西谷まで。
いま思えば、夢のような生活。
夢だったのか…
けさ、
夢を見ました。

 

・懸崖に羚羊の佇つ夏来る  野衾