金持ちか?知者か?

 

古代ギリシアの抒情詩人シモニデスは、
シュラクサイの支配者になっていたヒエロンの妻から、
金持ちになったほうがいいか、
知者になったほうがいいかと尋ねられたときに、
「金持ちだ」と答えたのだとか。
シモニデスいわく、
「なぜなら、
知者たちが、金持ちの門のところで時を過ごしているのを見るからだ」
アリストテレス『ニコマコス倫理学』
(京都大学学術出版会、2002年)
の153ページに、
訳者の朴一功(ぱく いるごん)さんが
注として紹介している文で知りました。
これを読んだとき、
すぐに、
以前勤めていた出版社の社長のことを思い出しました。
会社の仕事がひけると、
連日、ふたりで飲み歩いたものでしたが、
ある日のこと、
一軒目の居酒屋を出て
二軒目に向かうとき、
「俺のもとにいまひとが寄ってくるのは、
いまのところ俺が少しばかり金を持っているからさ」
とぽつり言いました。
そんなものなのかな?と半分同意し、
ふかく考えもせずに社長の後からとことこついていきました。
ちょうどまるまる十年勤めましたから、
プラス、マイナス、
その社長から学んだことは計り知れません。

 

・春疾風鳶は斜めに滑りゆく  野衾