ダマッコの白玉無敗のオセロかな

子どもの頃、秋になると、
果樹園をやっている母方の親戚に梨を買いに行きました。
まだ自家用車がなく、
耕耘機にトレーラーを付けたものを父が運転し、
母が助手席、わたしと弟は荷台に乗って
風を浴びながらはしゃいで行ったのを覚えています。
親戚の家を訪ね従兄弟たちとひとしきり遊んだ後、
果樹園に行って梨を箱ごと買って帰るのです。
夕方になると、昼と違い果樹園は鬱蒼とした森に変貌します。
少し肌寒くなってきます。
森のあちこちで、烏がガーガー鳴いています。
八郎潟を右に左に見ながら父は運転するのですが、
あるところに来て、ブレーキを踏みました。
どうしたのかと思って荷台の縁に顔を出すと、
父が「まぢがえだみだいだ」と言いました。
それからハンドルを切って、エンジン音を威勢良く鳴らし、
また走り出します。
どれぐらい走ったでしょうか、
父は、また、ブレーキを踏みました。
「…おがしな…。まだこごさ出でしまったな…」
さすがに父も焦っているようでした。
「きづねに騙されだべが?」
わたしと弟は顔を見合わせました。
背中に冷たいものが走りました。
小さい頃のことで、よく憶えていませんが、
あとは無我夢中で家に辿り着いたような気がします。
このことを思い出したのは、
先日、宮沢賢治記念館へ向かう上り坂の辺りの様子と
空で鳴いていた烏が少なからず影響しているようです。

 友来り風にふるえるとろろ汁

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