きのうの退社時、所定の場所にじぶんのゴミを捨てに行ったところ、
ちょうど業務用のゴミ袋をプラスチックの箱にセットするタイミングでしたから、
袋を一枚取り出し、セットしようとした。
そうしたら、
ん!? ……ん!?
ゆっくり、ていねいに、何度も、クチュクチュやった、
にもかかわらず、
ん!?
袋の口が開かない。
クチュクチュ、クチュクチュ。
何度も何度も。なのに、
だめ。
いっしゅん、指先に唾を付けてみようか、の考えが脳裏をかすめたものの、
それはさすがに憚られた。
なので、
社員に気づかれぬように、
静かに袋を持ったまま退出し、共用の台所で指先を濡らし袋を開け、
また静かに社に戻り、袋をセットした。
指先がこんなにすべすべするとは思わなかった。
いつの間にか指紋の山が滑らかになり、
ビニール袋を水分無しでは開けられなくなっていたことに、
改めて気づかされた。
と。
ここまで書いてきて、とつぜん思い出しました。
小学生のころ、
たしか朝礼のときだったと記憶してますが、
全校生徒を前にして当時の校長先生が、
ある女性についてのエピソードを紹介してくださった。
よほど印象に残っていたのでしょう。
校長先生のお話では、
その女性、
汽車を降り、駅の近くの郵便ポストに手紙を投函する際、
切手を貼るのに、
水道の水で指先を濡らしてから貼ったそう。
小学生のわたしは、
勝手に若い女性を想像し、
以来、
校長先生が話してくださったそのエピソードを思い出すことなく、
これまで来ました。
が、いま思う。思います。
お話のなかの女性は、
ひょっとしたら、
ある程度年齢を重ねていたのかもしれないと。
そうでなく、
切手をペロッと嘗めることを憚っての行為であったかもしれない、
そうかもしれない。
けれど、
今となってはもはや確かめるすべもありません。
・労の冬吾の眼魚になる夜かな 野衾

