経験の落とし穴

 

弊社は、きょうがことし最後の営業となりますが、
一年をふりかえってみて、
わたし個人としては「経験」ということを改めて考えた年でありました。
高校の教員を辞めて東京にある出版社に勤務し、
そこの倒産を機に同僚ふたりと春風社を起こしました。
出版社勤務がちょうど十年。
春風社がこの十月一日から二十五期目。
なので、
編集者として三十四年が経過したことになります。
本づくりについて習い、覚え、身につけてきたことがあります。
そのことが良きにつけ悪しきにつけ、
考えるときの土俵になっている気がします。
経験をとおして培ってきたことの重みを感じる
とともに、
それが重力のように逃れられない呪縛になっている
かもしれない
と、ふと、感じることがあります。
そう感じられることに感謝したいと思います。
いつの間にか、経験則によってものを考え、発想し、ひとを量るようになっていた
のではないか、
我執を離れ、
もっと自由に新しく考えることができたのではないか。
そう思ってみると、
これまでながく親しんできた『論語』や『聖書』の文言が、
これまでとはちがった響きをともなって、身に沁み、
こころに及んできます。
先人たちが『論語』や『聖書』をどんなふうに読み、
この世で与えられた仕事に、どう役立てていこうとしたのかが気になります。
ただ謙虚をこころに刻み、ひとに、仕事に、
向き合っていきたいと思います。

弊社はきょうが仕事納め。
2024年は1月9日が仕事始めになります。
どちらさまも、どうぞよいお年をお迎えくださいませ。

 

・ふり向けば老いたる犬の嚏かな  野衾