歌に詠われた塩竈

 

ふるい歌を毎日少しずつ読んでいると、あるとき、フッと、あるいは、フ~ッと、
歌が詠まれた時代に吸い込まれていくような、
まるで魔法のランプのなかに戻ってでもいくような、
そんな気持ちにとらわれることがあります。

 

『新古今和歌集』1611番

見わたせば霞のうちもかすみけり煙けぶりたなびく塩竈の浦

 

シンプルで分かりやすく好きな歌です。
峯村文人(みねむら ふみと)さんの現代語訳は、
「見渡すと、一面の霞の中でも、ひと所がいちだんとかすんでいることだ。
藻塩の煙のたなびく塩竈の浦のあたりなのであろう。」
「霞のうちも」の「うち」が利いていて、
実際に見たことのない藻塩づくりの景色が目の前にパ~ッと広がるようにすら思えます。
作者は藤原家隆さん。
1158年生まれですから、
わたしの生年からかぞえて799年前のひと。
計算、合ってるか?
検算。はい。合ってます。
歳とともに寂しさが加わる分、昔の人のこころにじぶんをかさねることで、
なぐさめられ、励まされ、しみじみさせてもらえたり。

 

・秋澄むや園児らの声ここにまで  野衾