ゲンジツと絡みながら

 

会社で飲むコーヒーはコーヒーメーカーによるものですが、
家では、サイフォンを使います。
めんどうでないこともないのですが、
ふっくらもわっとしたフラスコの形状も気に入っていて、
気晴らしを兼ね、
ゆっくり、じっくりを、その都度こころに刻むように淹れて飲む、
みたいなことかとも思います。
豆は、
焙煎を専門にする近くの珈琲店で購入していますが、
ブラジル産のものと、
もう一種類、
その日マスターが薦めてくれる豆を常備。
朝、
淹れる直前にミルで挽きます。
計量スプーンで適量の豆をミルに入れてハンドルを回すと、
ミルの刃が豆をつかみ、グッとストレスがかかり、
ガリガリガリガリガリガリ…。
数えていませんが、
一度に二杯分を挽くので、
120回から150回ぐらいのガリガリ度だと思います。
右手でガリすることが多いのですが、
疲れてくると左手も使い。
やがてガリガリの音が止み、急にストレスから解放されたようになり、
ミルの底を持ってミルを回すと、
ハンドルがくるくるストレスフリーで回転し、
なんとも気持ちいい。
その回転を見ながら、ふと、うつに陥っていた時期のことを思い出しました。
豆がゲンジツだとすると、
挽き終ったあとの状態というのは、
いくらハンドルを回しても、
もう一粒の豆もないから、
刃が豆に触れることはなく、ただクルクルクルクル。
豆があったときは、
豆に刃がグッと食い入り、
ブレーキがかかって回転が止まってしまうことも間々あるけれど、
考えようによってはそれがゲンジツ。
ストレスがかかることで、
からみながら目の前のゲンジツをくだき、
ひらき、仕事をこなしていく。
過度でなく、適度のストレスが、仕事にとっては必要でたいせつなものかと、
ふと、
そんなことを思いまして。

 

・涼の日のセゴビア空気より涼し  野衾