練り練られ

 

・日に一度下げて天下の秋となる

昨日昼、
専務イシバシ、武家屋敷を連れ、
本町小学校方面へ下り、
このごろ気になっていた店に入った。
麗々しく飾り立てることなく、
意匠が尖らず横になっているのも好ましい。
わたしと専務イシバシは肉の定食、
武家屋敷は野菜天麩羅定食。
画数やたらに多い。
それはともかく、
まもなく運ばれてきたお膳も整然と美しく、
味も悪くない。
というか、
美味しい。
きれいな店で、味も佳し。
なのに
なぜか客は少ない。
食後、
お茶をいただきつつしばらく雑談し、
尻がようやく重くなりかけた頃合を見計らい、
わたしがまず
サッと立ち上がり、
通路を進んで
奥に居た女将に声をかけた。
「ご馳走様でした。美味しかったです」
「九〇〇円になります」
「きれいなお店ですね」
「出来たばっかりですから」
「…………」
木で鼻をくくられた。
二度とは行かないだろう。

・月めくりこころ亡くすやセプテンバー  野衾