毛桃

 

我がやどの 毛桃の下に 月夜さし 下心よし うたてこのころ

 

萬葉集を読んでいると、
「毛桃」という単語が何度かでてきます。
毛桃とは、
「柔毛(にこげ)の密生した実のなる桃の木」であると、
「新潮日本古典集成」の『萬葉集 三』に語釈が載っています。
さらに、
「我がやどの毛桃」については、
「わが家の娘を譬えた。ここは女陰をもにおわす」との説明。
「月夜さし」は、
「娘に月水(初潮)の現われたことを譬えた」
「下心よし」は、
「心の奥底でひそかに満足感を味わうさま」と。
「うたて」は「なぜか、奇妙に」
この歌はまだわが家の娘のことなので、
それほどでもないですが、
男女の恋愛の歌において「毛桃」が登場すると、
さらに意味深になってきます。
学校教育も時代とともにどんどん変化しているようですが、
このたぐいの歌は、
ちょっと教科書にはなじまないか。

 

・厨より寂しき香せり菊膾  野衾