イタチごっこ

 

ひとつきほどになるでしょうか。
秋田の実家に電話した折、めずらしく母がでて、
「たいへんだったや」
と、
恐怖につつまれたような声を発した。
きけば、
鶏小屋のニワトリが一羽イタチに殺(や)られたとのこと。
首に噛みつかれ血を吸われて
絶命。
吸血鬼!
父がさっそくワナを仕掛けにっくきイタチを仕留めた。
そういう話でした。
それから数日して母から電話がありました。
なんと、
また別のイタチが現れ
こんどは二羽殺られたと。
おっそろしきイタチ。
父はふたたびワナを仕掛けイタチ退治。
それからどうなったか、
忘れてしまっていましたが、
きのう、
思い出して父に電話をしてみた。
そうしたら、
またまた別のイタチが
鶏小屋の朽ち始めた屋根のちょっとしたすき間から入り込み、
四羽殺られてしまったと。
一、二、四、
まさに倍々ゲーム。
十羽いたニワトリが
いまでは老いた三羽きり居なくなった。
イタチはどうやら
若いニワトリに照準を定め、
血を吸うだけで肉は食わないらしい。
「いだわしがったな、いだわしがったな」と父。
それにしても、
どんだけイタチがいるというのか。
ちかくに住む叔父がきて、
鶏小屋の屋根を補修し完璧を期したというが、
さてもさても
この一件どうなることやら。

 

・ランドセル置きて戯る数珠子かな  野衾