幸福な一冊

 

ジョージ・ギッシングの『ヘンリ・ライクロフトの私記』
を再読しようと思い、
たしかこの辺にあったはず、
と、
くまなく探した
はずなのになかなか見当たらず、
あきらめて古書を求めたところ、
本がとどく前の日に探していた本が見つかりました。
えてしてこんなものですね。
さてこの『ヘンリ・ライクロフトの私記』
これを好きだ
という人はけっこういるようで、
小説家の阿部昭さん(1934-1989年)もそのひとり。
朝日新聞学芸部編『読みなおす一冊』(朝日新聞社、1994年、pp.343-346)

その本にかんする阿部さんの文章が載っています。
末尾に
「私とほぼ同世代で相当な「本の虫」である女性、
英国で暮らした経験もありブロンテ姉妹の愛読者でもある女性にきくと、
彼女は高校三年の時以来、毎年元旦には原文でこれを読む、
正月でなくてもゆっくりした時にはついこの本に手がのびる、
そしていつも慰められる、
と答えた。
薄倖だったらしい著者の幸福な一冊である。」
とあります。
その『ヘンリ・ライクロフトの私記』
二冊持っていても宝の持ちぐされなので、
弊社のO編集長がもし持っていなければもらってもらおうかと思い
声をかけたところ、
二種類でている日本語訳を両方読んだのはもちろん、
大学院時代は上の女性のように
原文でも読んだとのこと。
その話をきいて、
わたしもうれしくなりました。

 

・はらを見せ煽らるるまま燕かな  野衾