辛夷咲く

 

このごろの朝のたのしみのひとつは、
保土ヶ谷駅に向かいながら、
丘の下にある辛夷の花の咲き具合を愛でること。
花の数は同じでも、
ひとつひとつの花の開花がすすみ、
木ぜんたいとして
空の雲をまとったようにもみえます。
八十六歳で亡くなった祖母は、
千昌夫の「北国の春」が好きで、
カラオケがまだない時代、
親戚があつまった席で何度か歌ったのをおぼえています。
歌詞のなかに
「辛夷咲くあの丘」とありますが、
わたしはかってに、
あの丘はこの丘だと思いながら、
鼻歌に興じます。

 

・かがまりて歌ふ祖母の背春兆す  野衾