でん六豆

 

子どものころよく食べていて、
それから数十年とんと忘れてしまっていましたが、
ちかごろ近くのスーパーマーケットでみつけ
なつかしくて買って食べたら
なんとも美味しくまたなつかしく、
以来、
常備している豆菓子
「でん六豆」
先日、家人の姪っ子JKが遊びに来た折、
「でん六豆」をすすめたところ、
「美味しい!美味しい!」と言って食べはじめ、
やめられない止まらない感じでしたから、
別れるときに
常備していたひと袋をプレゼントしました。
かのじょは愛知県在住ですが、
愛知県といえば、
なんといっても春日井製菓という老舗菓子舗があり、
豆菓子も製造販売しているので、
山形に本社がある株式会社でん六の「でん六豆」は初めてだったようです。
というわけで「でん六豆」
きのうも食べました。

 

・文庫本閉じて顔上ぐうららかな  野衾

 

澁澤さんの論語

 

吉川幸次郎の対談集『中国文学雑談』(朝日新聞社、1977)
を読んでいましたら、
井上靖との対談のはじめのほうで吉川さん、
こんなことを語っており
目をみはりました。
「『論語』というものを、私はそれまではたいへん反動的な書物だと思っていたのです。
(「それまで」というのは、大学に入って二十歳になってから
ということが前段に書いてあります――三浦)
ところが読んでみると、そうでありませんね。
そのころはいろんな反動家が『論語』をかついでいて、それに対する反感があったのです。
一番いやだったのは、私があまり好きでなかったある実業家が、
『論語』を非常にあれしていた。(「あれ」に傍点が付されています――三浦)
そのほか私の嫌いだった人が大へんもちあげているところから、
『論語』が大へんいやだったのです。……」
この箇所を読んで、
ははー、
ある実業家というのはきっと
澁澤さんのことだな、
そうにちげえねー
と勝手に思い込んでしまいました。
引用した後のほうで、
「ある実業家」について吉川さん、
自著『中国の知恵』のなかでそのひとの名前を実名で書いたら、
身内の方から手紙をもらい、
そのこともあって、
第二版以降は「ある実業家」とした(笑)
となっていますから、
『中国の知恵』の初版を見ればすぐに分かることですが、
それはまだ見ることが叶いません。
がしかし、
おそらく、百パーセント、まちがいなく、きっと、
澁澤榮一のことだろうと思いまして。
(まちがっていたら、澁澤さん、スミマセン)
という思い込みをふまえ、
ただいま
二松學舎大學出版部から昭和五十年に出版された浩瀚な『論語講義』
を読みはじめました。
(わたしが読んでいるのは昭和五十二年二月に上梓された第二刷)
吉川さんは嫌っていたようですが、
たしかに「反動的」と思える箇所がないわけではない
ですが、
それよりも、
澁澤さんが、
人生の指針としていつも『論語』のことを念頭に置いていた
ことがよく分かり、
だけでなく、
幕末から明治大正にかけての著名な人物たちとの交際が親しく語られており、
おもしろく読み進めています。
(この講義を澁澤さんは八十四歳のときから始めています)
千ページちかい本ですが、
あきらかに活版印刷で刷られており、
文語文と相まって
なんともいい感じ。
吉川さんの『論語』は好きだけど、
澁澤さんの『論語』もけして嫌いではありません。
ていうかむしろ好き。
吉川さんがあんなふうに感じたのは、
時代もあったのかと思います。
(下の写真の「BARBER吉川」は吉川幸次郎さんとは関係ありません、たぶん)

 

・おつかない医者にさよなら春ららら  野衾

 

力うどん

 

まえから不思議に思っていました。
力うどん。
餅が入ったうどんをなんでそう呼ぶんだろう?
餅を食べると力がでるから?
餅は腹持ちがいいというからそのせい?
ぎもんは尽きないわけですが、
食べるとおいしいから、
ま、いっか、
というながれで、
ぼーっときてしまいました。
ところが。
先日、あるそば屋でそばを食べていましたら、
となりのテーブルで、
力うどんを注文した客がありました。
しばらくして
「はい、力うどんです」
と出されたどんぶりを見て、
目をみはりました。
あっ!!
ふたつの餅がふたつとも
こんがり焼けた皮がやぶれ
中からプクーッ!
それはみるからに力こぶ。
筋肉自慢がぐっと力を入れたときにできる上腕二頭筋のもりあがりそっくり。
ははー、
これかー、
これだったのかー!!
ネットで調べると
そんなふうに説明しているひとは見当たりませんでしたが、
とりあえずわたしは確信しました。
プクーッとふくらんだ餅を力こぶにみたてたひとが
力こぶうどんと名づけ、
こぶとり爺さんのようにこぶがとれ
力だけがのこり、
力うどん。
きっとそうだ。
勝手にスッキリ!!

 

・五線譜にならべてみたき蝌蚪の群  野衾

 

桜始開

 

きょうから三十日までは、桜始開、
さくらはじめてひらく。
第十一候にあたります。
気象予報によると、
東京、神奈川では、今週後半から週末にかけてが満開となるらしく。
弊社のある西区紅葉ケ丘には
あるいて五分もかからない場所に掃部山公園があります。
かもんやまこうえん。
井伊直弼像を取り囲むようにして
桜の木が植えられており、
この時期になると、
広場にブルーシートが広げられ、
花見客でにぎわいます。
去年でしたか、
ドローンを飛ばして桜の枝に引っかけてしまった若いママさんがいました。
幼い子は指をさしてただ見上げているだけです。
そこにさっそうと現れたひとりの少年。
キャッチボールをしていた場所からそこまでやってきて、
二度三度、
下手投げでボールを放り上げました。
と、
ぐらりドローンがかたむき落ちてきた
ところをママさんキャッチ。
ママさん少年にお礼を言うと、
少年ぺこり頭を下げもとの位置へ小走りで去っていきました。
うーん。
かっこいい!
さてと。
きょうは花ぐもりか。

 

・イレヴンが山道を行く数珠子かな  野衾

 

動物と話せたら

 

ドリトル先生シリーズ三冊目
『ドリトル先生の郵便局』
子どもがわくわくしながら読むようには読めていないかもしれませんが、
おもしろく読みすすめています。
もしも動物のことばが分かって会話できるとすれば、
こんなこともこんなこともできるのかと
おどろくことしきり。
ツバメ郵便なんてすてきだなぁ。
気象予報だって、
人間の科学よりも
産まれてからずっと野外で暮らしている鳥たちのほうが
あたる確率が高そうです。
まえの巻『ドリトル先生航海記』にある話で、
犬が証言台に立ち
にんげんでなくただ一匹の目撃犬として殺人事件の真相を明かす
なんていうのも痛快でした。
検察官の反対を押しきり
犬を証言台に立たせることを認めた裁判官もえらい!
みとめるに至った理由にもなっとく。
もちろん犬語を通訳するのはドリトル先生。
ものがたりはまだたっぷりあります。

 

・山に入り笑つてゐるかと山に問ふ  野衾

 

トークイベント

 

安藤昌益の会事務局の石渡博明さんとの対談が近づいてきました。
今月31日(日)17時~
春風社にて

わたしだけのことでいえば、
どちらかというと声は大きいほうですから、
マイクなしでのぞむことが少なくなかったのですが、
あるとき
あることに気が付きました。
それは、
大きい声で話そうとすると、
そのことにばかり意識が向かい、
あたまがロックしてしまうということ。
前もって話すことが決まっていてひとりで行うような場合は
それでもいいのですが、
相手の方の話を聞きその場で考えながら
というようなときには、
立ち往生してしまいかねません。
その点マイクがあれば、
声がうしろまで届いているか
を気にせずに話せますから、
相手の話に集中し、
そのときその場で浮かんだ感想をつぶやいたりし、
そんなことからでも
話題を展開していくことができそうです。
相手の方にとってもそれはおんなじでしょう。
ということで、
今回は、
マイクと持ち運び可能なスピーカーを
レンタルすることにしました。

 

・我が子から出生訊かるる蛙かな  野衾

 

菜虫化蝶

 

きょうは三月二十日。
きょうまでの五日間が第九候で菜虫化蝶、
なむしちょうとなる。
ですが、
日々の移動のなかで菜の花を見ることはあまりありません。
ここ瀬戸ヶ谷の丘の上からのぞむと、
とおくに黄色いかたまりがちょこっと見えますが、
ひょっとしたら、
あれが菜の花かもしれません。
近くまで行って確かめたわけではありません。
でも、
おそらく菜の花でしょう。
きのうは菜の花の辛し和えをいただきました。
ほろにがくピリリと。
夜は芹。
芹はまた根白草ともよばれます。

 

・噛むごとにふるさと近し根白草  野衾