笑いと叡智

 

昨年、カルヴァン、ルターの著作を集中的に読み、
聖書理解も深められたか
とよろこんだのもつかの間、
どういうわけか、
だんだん胸が苦しくなってきました。
本のせいにするのはお門ちがいも甚だしいのかもしれません
けれど、
時代を画した人物、書物というのは、
清新さを帯びつつ
切っ先がなんとも鋭く研ぎ澄まされておりまして。
その切っ先に
触れてしまったような具合かと。
なので、
こんどは同時代のものながら
毛色のちがった書物を
と愚考し、
一計を案じ。
そうだ、ラブレーだ。
マイケル・A・スクリーチの
『ラブレー 笑いと叡智のルネサンス』(平野隆文訳、白水社)
を手に取りました。
渡辺一夫訳で
『カルガンチュワとパンダグリュエル物語』
を読んだのは三十年以上前ですから、
だいぶ時間がたってしまいました。
日本とも縁が深く
なんと渡辺一夫とも親交のあったというスクリーチさんのこの本、
日本語の訳文と相まって、
ふかく息ができ、
冬眠を終えてでてきたカエルのように、
ホッ!
ルター、カルヴァンの呪縛から
少し解放された気分になりました。

 

・孤独とや蒼茫として冬の空  野衾