虚証的生活

 

先日テレビを見ていたときのこと、
引きこもりの生活が長くつづいているひとを
積極的に採用する会社を紹介する番組がありました。
ひたすら自室にこもり家の外に出ることなく生活してきた男性が、
とる会社に採用され、
自宅でパソコンをつかって仕事をし、
それが月収10万円ほどになるとのことでした。
パソコンに向かいまずすることは
その日の体調の会社への報告。
「体調50% これから仕事に入ります」
一日の就労時間は六時間ほど。
このごろは外に散歩にも出られるようになって、
「家の裏がこんなになっていることを忘れていました」
と笑う男性。
インターネットとパソコンが普及したおかげで、
こういう働き方が可能になったのはいいことだと思います。
漢方の世界では、
人間を大きく二つのタイプに分けるらしく、
実証と虚証がそれ。
人生の早い時期から能力が開花しバリバリ何でもこなしていくタイプが実証。
それに対し、
人生でも日々の暮らしでも
スロースタートなのが虚証タイプ。
日本ではこれまで実証タイプがもてはやされ、
それはいまでも基本的に変わっていないけれど、
虚証タイプには
実証タイプとはちがう虚証タイプのよさがあることを
丁宗鐵(てい・むねてつ)さんは強調します。
丁宗鐵『名医が伝える漢方の知恵』(集英社新書)
社会や時代が
人間によってつくられることを考えれば、
人間だけでなく、
社会や時代も
大雑把な言い方をすれば、
実証タイプと虚証タイプに分けることができそうです。
ふりかえれば、
昭和の時代はまさに実証タイプ
だったかもしれません。
昭和が終わり、
平成が終わろうとしている現在、
虚証タイプの効用を考えてみてもいいかもしれません。
病気をしたことでよけいに身に入みました。

 

・程ヶ谷の陰(ほと)の辺りや寒夕焼  野衾