賀状書き

 

いよいよ賀状書きの季節がやってまいりました。
今回の画は、
版画家・矢萩英雄さんの
Café time。
ガネーシャが左手にコーヒーカップを持っている版画を
矢萩さんの了解を得て
つかわせてもらうことにしました。
「春風新聞」第23号の表紙を飾ったものですが、
好評につき
今回再度お願いした次第です。
印刷されたものを昨日渡したところ、
矢萩さん満足げな表情で、
ホッとしました。
さてきょうから賀状書き。
これもまた平成最後ということになります。

 

・冬夕焼老翁の背や権太坂  野衾

 

鱖魚群

 

第六十三候。
さけのうおむらがる。
きょうから21日金曜日まで。
サケなのになぜ「鮭」でなく「鱖」の字か。
中国の暦が日本に入ってきた際、
日本にはいない中国の鱖魚(けつぎょ)に似た生態のサケをあてた
と説明している人もいますが、
よく分かりません。
横浜はきょうは雨模様です。

 

・雪嶺や薄紫にからびたる  野衾

 

メモパッド

 

毎日つかうものにメモ用紙がありまして、
いろいろ試してきましたが、
いまは
無印良品のメモパッドをふだんつかっており、
たいへん重宝しています。
縦140×横100mm・200枚で税込み84円。
原料に古紙(50%)の再生紙を使用しているためか、
紙がすこし黄色味がかっており、
その色と肌触りが、
メモをするのにちょうどよく、
鉛筆で書く場合でもそんなにストレスがありません。
古紙の割合が高いものもありますが、
それだと、
ボールペンならよくても、
芯の濃さにもよるとはいえ
鉛筆には合わない気がします。
ということで、
先日さらに三個買い足しました。
200枚×3=600枚ですから、
しばらくもつでしょう。

 

・踵(あぐど)ずるり敷布に倒る冷(すさ)まじき  野衾

 

忘年会

 

ことし前半、体調不良にみまわれ
社員をはじめ、
ご縁のあるかたがたに
多大なご心配をおかけしましたが、
どうにか持ち直し、
写真家の橋本さんもお招きして、
きのう忘年会をひらくことができました。
会の冒頭、
乾杯のあいさつをした折、
ことし読んだ本のなかからベスト2を紹介。
ひとつはカルヴァンの『キリスト教綱要』
ひとつはプラトンの『国家』
いずれも
その文章と論にながれる時間の観念に圧倒されます。
千年二千年が
ひよわな想像でなく、
たしかに幻視されたものとして
こちらにひしひしと伝わってきます。
その迫力。
学術書の出版社としては、
たとえばカルヴァン、プラトンの後塵を拝し、
千年二千年を幻視しつつ、
世のためひとのため
になるような本を上梓しつづけたいです。
あと二週間とちょっと。
気を抜かずに行きたいと思います。

 

・いとどしく鷄焼く煙(けむ)や寒夕焼(かんゆやけ)  野衾

 

熊蟄穴

 

きょうから十六日の日曜日までは第六十二候。
くまあなにこもる。
冬を越すために動物たちが穴にはいるシーズン。
冬眠といえば
かならず思い出すことがありまして。
小学何年生だったでしょうか。
冬休みをどう過ごすかの計画表をクラスで作成していたときのこと、
ひょいと見ると、
前の席のTくんが一日の終わりのところに
「冬眠」と書いていました。
「睡眠」と書くべきなのに、
とは思いましたが、
冬の日に眠るから「冬眠」でもいいかと思い直し、
そのまま言わずにおきました。
あのあと、
計画表を担任の先生に提出したはずですが、
先生から直された話をTくんから聞くこともなかったし、
先生が話題にすることもなかったから、
あのままだったのかもしれません。
Tくんは冬眠の日々を送ったものと思われます。

 

・池の水うごかぬままに落葉かな  野衾

 

閉塞成冬

 

先週七日からきょうまでが第六十一候。
そらさむくふゆとなる。
季節のめぐりのとおり、
いよいよ寒くなりまして、
きのうはじめてホッカイロをつかいました。
おかげで寒さを感じることなく、
いちにち快適に過ごすことができました。
炬燵でまるくなれない猫は寒そうです。

 

・こぼれてのしずく円きや冬の朝  野衾

 

虚証的生活

 

先日テレビを見ていたときのこと、
引きこもりの生活が長くつづいているひとを
積極的に採用する会社を紹介する番組がありました。
ひたすら自室にこもり家の外に出ることなく生活してきた男性が、
とる会社に採用され、
自宅でパソコンをつかって仕事をし、
それが月収10万円ほどになるとのことでした。
パソコンに向かいまずすることは
その日の体調の会社への報告。
「体調50% これから仕事に入ります」
一日の就労時間は六時間ほど。
このごろは外に散歩にも出られるようになって、
「家の裏がこんなになっていることを忘れていました」
と笑う男性。
インターネットとパソコンが普及したおかげで、
こういう働き方が可能になったのはいいことだと思います。
漢方の世界では、
人間を大きく二つのタイプに分けるらしく、
実証と虚証がそれ。
人生の早い時期から能力が開花しバリバリ何でもこなしていくタイプが実証。
それに対し、
人生でも日々の暮らしでも
スロースタートなのが虚証タイプ。
日本ではこれまで実証タイプがもてはやされ、
それはいまでも基本的に変わっていないけれど、
虚証タイプには
実証タイプとはちがう虚証タイプのよさがあることを
丁宗鐵(てい・むねてつ)さんは強調します。
丁宗鐵『名医が伝える漢方の知恵』(集英社新書)
社会や時代が
人間によってつくられることを考えれば、
人間だけでなく、
社会や時代も
大雑把な言い方をすれば、
実証タイプと虚証タイプに分けることができそうです。
ふりかえれば、
昭和の時代はまさに実証タイプ
だったかもしれません。
昭和が終わり、
平成が終わろうとしている現在、
虚証タイプの効用を考えてみてもいいかもしれません。
病気をしたことでよけいに身に入みました。

 

・程ヶ谷の陰(ほと)の辺りや寒夕焼  野衾