あいさつ少年

 

三日前のことになりますが、
保土ヶ谷橋から路地に入って
急階段をえっちらおっちら上りきり、
さらに坂道を歩いて
右に大きくカーブしたあたり、
「こんばんは!」
と声をかけられました。
「あ。こんばんは」
少年はそのまま坂を下りていきました。
ちょっと驚いた。
なぜあいさつしてきたのでしょう。
ごくあたりまえのような
「こんばんは」
いや、
少年にとって
「ような」ではなしに
ごくあたりまえだったのでしょう。
面識はなくとも、
あの時間に歩いているのは近所の人にちがいないから、
いやそんなことを考えることなく、
ふつうにあいさつしてくれた
のかもしれません。
とにかく気持ちよかったです。
おそらくこの少年、
このごろは朝六時半に「行ってきます」と
大きな声で言って家を出る彼でしょう。
声がわたしの部屋まで聞こえてきます。
何年か前までは
七時半ごろでした。
部活動の朝練習でもするようになったのかと想像していますが、
あの少年にちがいありません。

 

・吹く風の落ちてかそけき暮れの秋  野衾