性のこと

 

ジャン・カルヴァン著『キリスト教綱要 改訳版』(渡辺信夫訳)
を読んでいたところ、
「対照句」という語句に出くわした。
聖書中の対照すべき、参照すべき語句という意味だろうと思い、
下の行に目を移動させ(この本は横書き)
たのですが、
「対照句」という三文字は、
ふつうの国語辞典にはでていないのでは
と、
ふと疑問がもたげ、
電子辞書をひいてみることに。
見出し語検索で「た・い・しょ・う・く」と入力。
やはり「対照句」はでてこない。
「大将軍」がでてきた。
ハハハ。
なるほど。
それで終わりにすれば済んだもの。
画面の左側、
見出し語の項目の並びに
『家庭医学大事典』の「コラム」として「代償月経」
という文字があるのを目にした。
クリックすると、
「予定日になっても月経がこない女性が、毎月1回定期的に、
性器以外から少量の出血をおこすことを代償月経といいます。よくみられるのは鼻血です。
その他、歯肉やのどから出血することもあります。[……]」
その文言を目にしながら、
不思議な感慨にとらわれた。
かつて天才漫画家谷岡ヤスジの漫画に「鼻血ブー」
ということばが登場し、
流行語にもなったはず。
わたしが中学生だったころ、
まだ谷岡ヤスジも「鼻血ブー」も知りませんでしたが、
からだとあたま、こころまで
日々、怒涛のごとく
ムラムラもしゴニョゴニョもし
まさにブーブーの鼻血ブー。
「月経」「性器」「出血」という語を目にしただけで
ただならぬ動悸を感じたものだ。
それがことの発端、始まりではあった。
恋愛といい読書といい酒といい。
以来幾星霜、
逝く精巣(馬鹿だ)
呪縛から解放されたわけではないけれど、
「月経」「性器」「出血」
等々の単語を
今ではわりと涼しげに眺めている
自分に気づく。
おそらく血圧も正常だろう。
思えばいつの間にか年取った、はるか遠くまで来たものだ。

 

・ぼろ布(きれ)のごとく飛ばさる夏の蝶  野衾