ミヤタの自転車

 

中学へは自転車通学でした。
多くの生徒がそうで、
入学前に親から
あたらしい自転車を買ってもらいました。
わたしもカタログを見て
これ
と目をつけたものを買ってもらいました。
ミヤタの自転車。
艶消し黒塗りのボディが渋い!
そう思ったのでした。
天神にある自転車店は交差点の角にあり、
自転車の販売だけでなく、
修理もしてくれた。
赤ら顔のおやじさんがいつもいて、
あまり、
というか、
ほとんどしゃべった記憶はないけれど、
ガラス張りの作業場のなかで仕事をしていたっけ。
帰省するたび、
父が運転するクルマに乗って
天神を通ります。
往きに復りにひょい
と目をやると、
仕事途中のような作業場から
赤ら顔のおやじさんが不意に現れそうな錯覚を覚えます。

 

・卓上に焼き鳥ビールまずは良し  野衾

 

 

セミの死骸があちこちで目につくようになりました。
先日、
駅ホームのベンチに腰掛けたところ、
すぐ目の前にアブラゼミ
がいました。
もしや生きてやしないかと思い、
そっと触れてみましたが、
ピクリとも動きません。
ほんの数分前まで生きていたのかもしれません。
わたしは鞄から読みかけの文庫本を出し、
読み始めました。
となりに二歳ぐらいでしょうか、
ちっちゃい男の子と
その横に若い母親が座りました。
「ようちゃん、ほら、セミ」
ようちゃんと呼ばれた子は、
目の前のセミを目ざとく見つけ、
右手を伸ばして摘まもうとしました。
転瞬、
死んでいるとばかり思っていたセミがジジとバタつき、
勢いよく飛んでいきました。
ふらつくことなくまっすぐに。
快晴とまではいきませんが、
青空がホームの屋根に触れています。

 

・散髪を待つ間のテレビ猛暑告ぐ  野衾

 

むろんこ!?

 

むろんこ。
むろんこ。
あまり、というか、
ぜんぜんまったく聞いたことがない。
とわだこ、たざわこなら知っている。
ましゅうこ、しこつこも知っている。
ふじごこは山梨県か。
たらこ、すじこ、めんたいこは食べ物。
ひとの名前でさくらこなんてのも
あるにはあるが、
むろんこ、
というのは初めてだ。
もう一度、目の前の原稿をよ~っく見てみる。
「むろんこの理想とするところは…」
ふむ、
むろんこの理想。
待てよ。
あ。
そうか。
むろんこ、の理想
ではなく、
むろん、この理想か。
そうかそうか。
読点入れてくれよ。
ああびっくりした。

 

・夏蝶の来(きた)り廻りて飛び行けり  野衾

 

猛暑緩和

 

ただいま朝の五時二十八分。
このところの猛暑で、
夜もエアコンを付けたままにしていることが多く、
朝、窓を開けると、
早朝にもかかわらず
暑い空気がムッと室内に入り込み、
いそいで窓を閉めていたのに、
けさは
窓から久しぶりに涼しい風が流れこみ、
大きく息を吸い込みました。
こうでなくちゃ。

 

・張り替えて煙(けむり)抜けゆく網戸かな  野衾

 

加齢?煩悩?

 

自宅テーブルのうえに新聞がポンと載っていた。
ひょいと見る、
「性」の文字と「交」の文字が目に飛び込んできた。
なぬっ!?
新聞の見出しに使われるとは
ただごとでない。
ななめに置かれた新聞に
やおら近づき
文字に焦点を合わせてゆっくり読み下ろす。
と、
文章のタイトルは
「独自の創造性 父から子へ継承」
「交」でなく「父」であった。
似てないことはない。
がしかし、
われながら馬鹿だ。
ちなみにこの文章、
7月17日(火)朝日新聞夕刊、
樂美術館館長十五代樂吉左衞門さんの
インタビュー記事。
加齢による見間違え
(いや、煩悩による)とはいえ、
申し訳ございませんでした。

 

・アスファルト浮き歪みして蟬の声  野衾

 

対談のお誘い

 

わたしが高校教師を辞め出版人になったのは、
なんといっても、
出版社港の人の社長・上野勇治さんとの縁を抜きに語れません。
港の人は、
ご存知の方も多いと思いますが、
鎌倉の地で
個性ある本をつぎつぎに上梓している出版社です。
その上野さんと対談することになりました。
テーマは、
本づくりの根
2018年9月1日(土曜日)15時~
春風社にて
ご興味のある方はお立ち寄りくださいませ。
参加費は無料です。

 

・古井戸にぷうかり重き西瓜かな  野衾

 

印泥

 

きのうはマンションの総会。
議題は、
二十二期の決算と二十三期の予算などについて。
もうそんなに経ちました。
あっという間です。
ところでわたしは二十二期の理事長(持ち回り)
でしたから、
指定された場所に時刻どおり到着。
総会といっても、
全部で十四世帯のミニマンション、
毎回委任状の提出が多く、
わたし以外に二人の参加で総会成立。
管理会社から来たふたりを合わせて五人。
総会ならぬ小会。
話し合いはとどこおりなく進行し、
次期役員選出について
のところで、
わたしは管理会社に注文をつけた。
安い朱肉をやめ、
ちゃんとした印泥にしてほしいと。
持ち回りとはいえ
理事長に選出されたとなると、
取引銀行に提出する書類に印鑑を捺す義務がある。
それはいいとして、
昨年、
二度ばかり提出書類を銀行からつき返された。
印鑑の文字が滲んで読み取りにくいという理由で。
仕方がないから、
貴重な印鑑を会社に持参し、
会社の印泥をつかって捺印をやり直し再提出。
というようなことがありましたので、
管理会社の担当者に
つよい口調で申し上げたのだ。
「五百円の朱肉でなく五千円の印泥を買ってください!」

 

・茹でたてを頬張るしばし端居かな  野衾

 

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