色の名、名の魔法

 

この日記の下に写真を一枚載せるようにしています。
花あり、木々あり、食べ物あり、
街で見かけた変なもの、
いろいろですが、
写真を撮ろうと思って立ち止まるとき、
なによりもまず色に目がいきます。
歌を聴くとき、
歌詞よりもまず音に耳がいくように、
モノを見るときは色。
このところ、
『日本の色図鑑』(吉田雪乃 監修 松尾ミユキ 絵)
を読んだり、眺めたりしています。
「はじめに」「目次」「INDEX」奥付をのぞき全頁フルカラー!
目次をひらくと、
紅梅色から始まり、桃色、桜色、……
灰色、胡粉色、墨色まで
88の色の名が取り上げられています。
「目次」「INDEX」を参考にして本文を開けば
右側のページにその色が印刷され、
下に小さく、
CMYKの文字。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、
つまり印刷で
どのインクとどのインクを
どのように組み合わせるとその色を表現できるかを教えてくれています。
左のぺージには、
色の説明が短すぎず長すぎず施され、
さらに関連色を三色紹介。
ということは、
88色×(1+3)で、352色。
数の多さに目をみはります。
ですが、
日本の伝統色には諸説あるとのことですからさらにビックリ。
色の名を知ることは世界を知ること。
『ゲド戦記』では、
立派な魔法使いになるためにまずしなければならないのは、
モノの名前を知ることでした。
砂ひとつぶひとつぶ、
本当は名前がちがっている。
モノの名を知らなければ魔法をかけられない。
魔法使いになることは
なかなかむずしいけれど、
色の名を知り、
その名のもとになった風物を知ることで、
歌を詠い、詩をつくることはできる。
また、
つくられた歌や詩を楽しむことも。
この本には「山吹色」も取り上げられていますが、
たとえば松尾芭蕉の
「ほろほろと山吹散るか滝の音」
が色の名を知ることで、
山あいの風景のなかに
山吹のあの黄金のようなあざやかな黄が浮かび上がり、
清冽な滝の音がいまここに聞こえてくるようです。
むかしのひとが作った句を眺め
共感するというのも
一つのたいせつな魔法かもしれません。
ゆっくり何度でも楽しめる本です。

 

・散歩道茉莉花の庭雲流る  野衾