アリ

 

自宅をでて左手、
ゆっくり二分も歩けば小さな公園があります。
そのわずかの時間の小道は、
もともと崖のふちであったからか、
短いながら野趣があり、
ときどきリスやタヌキが出没します。
小鳥も啼いています。
ゆっくりしずかに歩いていると、
歩くスピードに反比例して
いろいろな生き物の数が増していくようです。
そんなことはないはずなのに、
それだけふだん見過ごしている
ということなのでしょう。
よく見ると、
風がないのに、
ごみのような葉の切れ端が
大海に浮かぶ小さな帆掛け船のように
揺れ動いています。
アリが強い顎でくわえ運んでいるのです。
そこまで近づくと、
あっちもこっちもアリアリアリ。
こわい歯医者に行ったときの、
みがき残しの歯の検査を思い出してしまいます。

 

・公園の藤棚ひとつ吾もひとり  野衾