夢の話――増殖する部屋

 

・コーヒーをふたつ並べる春の宵

 

わたしが住んでいるボロアパートに畏友の上田さんが遊びに来ました。
ボロアポートながら、
部屋は三つありますから、
上田さんにゆっくり泊まってもらうことができます。
少し近況を聞き、
上田さんにと思った部屋を確認しに行くと、
その奥にもう一つ部屋があることに気が付きました。
どうして今まで気が付かなかったろう。
薄暗い座敷牢のような部屋。
こわごわ入ってみると、
さらにその奥に板張りの部屋があって、
黒光りする大小の仏像が所狭しと置かれています。
後ろからついてきた上田さんが、
へ~、
と驚いています。
仏像のある部屋の隣は、
カントリー&ウェスタンのバーになっていて、
そのレコードの多さには舌を巻きます。
カントリー&ウェスタンといえば、
上田さんの得意とするところ、
彼に即興で演奏するよう促すと、
まんざらでもなくすぐにギターを取り上げ演奏が始まりました。
やんややんやの大喝采。
演奏が終わってバーを抜けると、
そこは広々とした遊園地。
ジェットコースターもあればモンスターもいて。
部屋がつぎつぎ生まれ、
現れ、
性質を変え、
増殖はまだ止まぬようです。

 

・恥ずかしきこころに似たり光る風  野衾