学術書を読む

 

・春の風ガラス戸越しの床屋かな

 

朝日新聞社主催「築地本マルシェ」鼎談に登壇。
談に壇、
だんにだん、
韻を踏んでおります。
それはともかく。
テーマは「学術書を読む――「専門」を超えた知を育む」
農業環境技術研究所上席研究員で東京大学教授の
三中信宏さん、
京都大学学術出版会専務理事で編集長の
鈴木哲也さんとの充実した一時間。
三中さんが理系の方なので、
さてどんな感じになるのかな
と多少心配もしましたが、
そこは手練れの鈴木さんが司会進行役を兼ねてくれましたから、
割と自由に、
ふられた話題について話すことができました。
終ってから、
リップサービスはあるにしても、
「面白くて仕事を忘れつい聴いてしまった」
と感想を言ってくださる方もいて、
胸をなでおろした次第。
話しているほうとしては、
けっこう長く感じました。

 

・春風や百姓たちの声高し  野衾

 

ひとと建物

 

・春風や田面(たづら)の端に農夫立つ

 

東横線の桜木町駅がなくなり、
駅周辺は大きく様変わりしましたが、
駅ビルに集まる人が日に日に多くなっている気がします。
いまの流行らしく
オープンスペースが適度に確保され、
店に入らなくても、
建物のなかのベンチに腰掛け
お弁当を広げる人もいます。
駅なのに公園みたい。
ほんの小さなコーナーには
スマホ教室、
白髪の女性が二人、
若い店員さんと談笑しています。
建物はひとと馴染んで親しみが増すようです。

 

・春風に農夫佇む田面(たづら)かな  野衾

 

雪玉割

 

・春めくや鎌倉上空鳶六羽

 

大石清美の『ごじょうめのわらしだ』を読んでいると、
子どものころの遊びが事細かに記されており、
なつかしくもあり、
よくぞ書き残してくれたと感動しきり。
そのうちのひとつ、
雪玉割。
雪をにぎって硬くし、
さらにコンクリートの上で圧をかけたり、
いろいろ工夫してマイ雪玉をつくり、
下に置いた相手の雪玉にマイ雪玉をぶつけ割れたほうの負け。
いたってシンプルな遊びながら、
けっこう燃えた。
『ごじょうめのわらしだ』によると、
芯にたろんぺ(つらら)の砕いたのを入れると硬くなった
というが、
その方法は試したことがなかった。
いやはや、
なつかしくて涙がでそう。

 

・暗き庭少し照らせよ梅の花  野衾

 

お、きょうは

 

・弟と母に贈りし猫柳

 

このブログの記事は、
朝起き出して歯をみがきコップ一杯の水を飲んでから
パソコンを立ち上げ、
ゆっくり前日あったことに思いをめぐらし、
なにか面白いことはなかったかと
思い出して書くことが多いわけですが、
とりたてて書くほどのこともないなぁという日もあり、
そうなると、
あちこちきょろきょろ眺めまわすことに…。
ふとカレンダーに目をやると、
きょうは14日。
二月十四日。
バ、バレンタインデー。
小さいころからチョコレートが好きでよく食べていましたから、
製菓業者の戦略とはいえ、
こういう日が設けられたことは
ことのほかうれしく、
若いころはもうばくばく食べていました。
いまはそういうわけにはいきませんが、
一個をありがたく
美味しくいただくようにしています。

 

・猫柳そのふくらみの母に似て  野衾

 

梅の花

 

・春風やさてと出かける靴修理

 

北陸を中心にたいへんな大雪にみまわれていますが、
気温は少しずつ上がってきているようです。
自宅近くの石の階段を下りると
コンクリートブロックで囲まれた庭があり、
そこに梅の木があって
ことしも可憐な白い花を咲かせ始めました。
用事もありますが、
しばしホッと息のつく時間です。

 

・春立ちて雲行く空の広さかな  野衾

 

徳光さんの俳句

 

・春の気や吾(あ)がたましひに深くなれ

 

きのうは木曜日でプレバトの日。
途中から見ましたが、
才能あり一位は徳光和夫さん。
その句
「車窓から梅だあの娘の校章だ」
車窓を眺めていて
「あ、梅だ!」とおどろき、
五十年ほど前、
自分が高校生だった時のことを思い出し。
気になっていた他校の女子の、
その校章が梅の花だったことを詠ったと…。
なので、
「車窓から梅だ」で一度切り、
ひと呼吸おいてから読むと、
より徳さんの気持ちが分かる気がする句です。

 

・遮断機に春風揺るる郷(さと)遠し  野衾

 

マッサージチェア

 

・煎りたての春の薫りの豆屋かな

 

弊社の始業時刻は十時ですが、
わたしはだいたいその一時間前に出社します。
なぜなら、
社にあるマッサージチェアに座り、
三十分たっぷり体をほぐしたいから。
ふたつの揉み玉が
首から尾骨にかけてゆっくり移動していくと、
眠っている間のしこりがほぐれるようで
なんとも気持ちよく。
三十分が経過し「ピ」と音が鳴ると終了。
始業まではまだ間があり。
同じ朝なのにちがって見えます。

 

・その苦さその白さ食ぶ葱(ねぶか)かな  野衾