木目

 

・秘所までも夏日に曝す真蛸かな

 

整体の日。
いま話題の鵠沼海岸まで。
一昨日『出没!アド街ック天国』で紹介されました。
ネルとジャスも迎えてくれます。
施術を受けるベッドには
穴が開いており、
うつぶせになったとき
そこに顔を嵌めると苦しくありません。
穴の下に板張りの床が見え、
木目が見え、
目をぱちくりさせ。
たとえば雲は
実際に刻々と形を変えますから、
見ていて飽きません。
雲とちがって床の木目は
形を変えません。
が、
じっと見ていると、
あれ?
ただの波打つ木目が、
口笛を吹きながら空を駆ける痩せ馬だったり、
うずくまるオオカミだったり、
とてもとて~も細長いクジラだったり。
……………
はい。それでは仰向けになってください。
はい。

 

・目覚めての寂しさつのる昼寝かな  野衾

 

小説の時間

 

・夏草や折れた鎖骨は遠位端

 

朝はひきつづきハンス・ヘニー・ヤーン。
プルースト、ジョイスはもちろん、
トルストイ、バルザック、
源氏物語でも、
最初のページから
血わき肉躍る
なんてことはまずない。
むしろそれがいい。
おもしろくないのがおもしろい!
なんて。
いや、
強がりでなく。
しているうちに、
ダリの時計の絵のように時間がぐにゃりと歪みはじめます。
このぐにゃり感がえも言われない。
物語のおもしろさとはまた別な気がします。
小説の時間が
現実日常の時間とパラレルに
同等の、
ときに、
それ以上の厚みをもって走るには、
ある長さが必要です。
一か月、二か月、
半年ぐらいだと尚いっそう。

 

・遠位端夏の涙の乾きけり  野衾

 

コミュニティ事典

 

・広々と工事現場の暑さかな

 

三年を費やして完成した『コミュニティ事典』が売れています。
総1168ページ、定価27000円(税込)
15の大項目内に総417項目、執筆者284名
コミュニティは拡散し、
見えにくくなっているけれども、
なくなったわけではなく、
また、
ひとがひととして生きていくために、
実のあるコミュニティをつくっていかなければなりません。
その意味で、
コミュニティは発見されることを、
また、
創造されることを待っている
と言えるでしょう。
たとえば、
相模原で起きた障害者施設殺傷事件から
一年が経過しましたが、
被害に遭った方のご遺族は
被害者の名前を公表することを認めておらず、
それは、
認めないのではなく、
ひょっとしたら、
したくても
「できない」社会だからかもしれません。
一昨年亡くなった詩人の
長田弘さんの詩に、
「世界は一冊の本」がありますが、
そこに、
「書かれた文字だけが本ではない」
というフレーズがあります。
ひとと社会をつなぐのがコミュニティであり、
社会そのものが、
コミュニティの連鎖ともいえるでしょう。
ひとがひととして生きていくために
何が重要で
欠かすことができないのか、
コミュニティの果たすべき機能を
深くていねいに
読み解いていく必要がありそうです。

 

・交差点スクランブルの暑さかな  野衾

 

やっぱビール

 

・熊や虎滑るがごとく夏の雲

 

痛風発作を警戒し、
ノンアルコールのビールでごまかしてきましたが、
からだ全体の調子がもどった気がし、
恐る恐る、
祈るようにして缶ビールを開け
グイと。
うんめー!!
もひとつ、
うんめー!!
やっぱりちがうなあ、
あたりまえといえばあたりまえ。
飲み始めと中ごろは
それほどでもないのですが、
ごくごくごくとやって、
最後、
ごくっと飲み干した時の
口中に残る味が、
ノンアルとビールでは決定的にちがいます。
香料の問題?
なので、
ノンアルはノンアル、
ビールはビール、
別物として
それぞれ楽しむことにします。

 

・沈黙のことば豊かに夏の雲  野衾

 

魚眼レンズ

 

・蟬を過ぎまた蟬を過ぎ蟬の声

 

いつも子どもたちでにぎわっているグラウンドが、
夏休みを迎え、
人っ子一人いません。
りなぴは今日からインターンシップか。
がんばれよ。
グラウンド横の
少し高いところにある階段から眺めているせいか、
平らなはずのグラウンドが、
まるで地球表面のように、
真ん中が盛り上がり、
端に行くにつれ低くなっているような、
おそらく錯覚なのでしょう、
寂しさを
魚眼レンズで覗いたような、
そんなふうにも見えます。
魚眼、
魚のまなこ、
秋田ならまなぐ、
夏は静かに魚の目は涙。

 

・盛り上がる子ら無き夏のグラウンド  野衾

 

岸辺なき流れ

 

・白シャツの乾きて風に吹かれけり

 

ハンス・ヘニー・ヤーンの『岸辺なき流れ』
上巻半ばまで。
読み始めは、
ちょっとこれきついなあ、
と思ったものですが、
物語の独特の進行に慣れてきたのか、
小説を読む醍醐味がじわりと。
ヤーンはマイナーな小説家らしく、
日本ではあまり読まれていないようです。
プルーストやジョイスと比較される作家ですが、
本人はカフカを意識していたのだとか。
この本を知ったのは、
図書新聞に掲載された書評でした。
いま手元にないので、
どなたの
どんな内容の書評だったのか
忘れてしまいましたが、
緊張感のある
いい文章だったと記憶しています。
書評がよかったので、
そういう小説なら読んでみようと思いました。
装丁は間村俊一さん。
ヤーンの小説では、
ほかに『十三の不気味な物語』が
種村季弘訳ででています。

 

・夏静かカレーの匂ひ屋に充つ  野衾

 

急ぐなよ

 

・夏草や朝靄の中馬一頭

 

このごろは、
口に入れるものは何に限らず
ゆっくりと、
よく噛んで食べるようにしていますが、
そうすると、
胃腸の具合がいいのはもちろん、
頬の内側や舌先を
間違えて齧ることがとんとなくなりました。
通の食べ方からはほど遠く、
しかし、
米も麦も蕎麦も饂飩も、
本来の味がわかり、
じわり体に沁みていくようです。

 

・荷を担ぎ工事現場の蟻二匹  野衾

 

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