本に隠れる

 

・校正の目を上ぐ先の走り梅雨

 

恐ろしいものから逃げて、
逃げて逃げて、
ここなら絶対見つからないだろうという処に
隠れるのですが、
どういうわけか嗅ぎつけられてしまう、
そんな夢をよく見たものでした。
が、
このごろとんと見なくなった。
隠れるところがないというのは恐ろしい。
そんな時代がどうやら始まっていて、
夢よりも鬼よりも恐ろしい。
貧乏神の薄ら笑い。
こうなったら、
本に隠れるしかない。
大学、中庸、法華経、正法眼蔵、聖書、杜甫、論語、
隠れる本はいくつもある。
隠れる場所のある本がいい本だ。

 

・荒梅雨や紙の擦れる音すなり  野衾